第2章 30話 スーフィアは石垣の上から

 海の精霊のスーフィアは、飛雨と並んですわっていた。

 石垣の上から、夏澄たちの様子を窺っている。

 

 霊泉の北にある、段々畑の石垣だ。


 夏澄は風花を置き去りにして、結界にもどってしまった。


 風花は大木の根元でぼんやりしている。


『ローフィ……』


 愛おしそうに、大事なあの娘の名を呼んだ夏澄の言葉が、胸に刺さる。


 夏澄はどうしても、風花とローフィを重ねてしまうんだろう。


「おい、どうするんだよっ」


 飛雨が喚いた。思い切り機嫌がわるくなっている。


 精霊を捜して、山までいったスーフィアだったが、結局、微塵も気配を感じられなかった。


 仕方なくもどってくると、飛雨がなぜか石垣の上にいた。


 遠くから、夏澄たちを見ていた。


 夏澄の様子がおかしかったからだ。

 挙動不審といってもいいくらい、行動が不自然だった。


 おまけに、風花の兄という少年もいた。

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