第5章 54話 優月と青葉

「よかった、風花。……無理をしてっ」


 夏澄の瞳には涙が浮かんていた。


「ごめんなさい、夏澄くん」


「風花、それは?」


 手に持っていた柑橘類の葉を、夏澄が覗き込む。優月も続いた。


 「風の中にあった葉っぱだよ。枯れ葉だったけと、青葉になったの」


「青葉に?」


 夏澄はふしぎそうにする。


「優月さんに触れたら、青葉にもどったの」


「これは、私の葉です。なぜ、あの風の中に」


「ああ、だから優月さんの霊力を吸い取ったのかな」

「吸い取った?」


「うん、そんな風に見えたよ」


「葉に霊力は吸えないよ。優月が霊力を送ったんじゃないかな」

「私が……?」


 優月はなにかを考え込むようにする。


「私の霊力でよみがえるのは、私がつくったものの可能性が高いですよね。そう考えると、この葉は私の霊力がつくったものということになります。あの風も……」


 え? と思う。

 そんなはずない。え? と思う。 優月さんは、あの風に狙われていたはずだ。


 風花は助けを求めるように夏澄を見た。夏澄は優しい瞳で風花の肩に手を置く。


 彼は葉に手を乗せて、霊力を放った。 葉のことを探っているようだ。

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