第5章 53話 薄い水色の雨

 同時に強い風に押された。


 なぜか、優月の周りで風が起きた。

 風は渦のように優月の周りをめぐったあと、周囲に散らばった。


 風花は正面から風を浴びる。


 悲しげな香りの風に包まれた。思わず息を止めた。


 やがて、風に熱のようなものを感じた。


「風花っ」

 夏澄の悲鳴が聞こえる。


  胸の辺りが熱くなって、息ができなくなった。目の前が暗くなり、風花の意識は薄れていく。


 薄目の風花の視界の中で、優月もふらついていた。


「夏澄、立貴みたいに風を霊力で照らしてっ」


 スーフィアの声が響く。


 夏澄は目を閉じて、願うような仕草をした。


 やがて、雨が降り出した。普通の雨と違い、薄水色をしている。


 雨を浴びるど、体が暖かくなった。


 春の陽射しのような暖かさに包まれる。 吹き渡っていた風も消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る