第5章 55話 優月

「そうだね、これは……」


 霊力を放った夏澄は、だんだん無表情になっていった。やがて、悲しげに瞳を伏せる。


 透き通った水色に潤んだ。


「どうしたの?」


  訊いても、夏澄はうつむいて応えない。

 スーフィアがそっと夏澄のとなりに立った。


 スーフィアも霊力で葉を探っていた。


「そうね。これは優月の葉ね。風の残りからも、優月の霊力を感じたわ」


 やがて、スーフィアの静かな声がした。


 風花はよく意味が分からない。


 あの風を優月さんが出していた?

 春ヶ原を襲っていたのは優月さん?


 まさか。そんなことあるはずない。


 思った風花は、風の悲しみと草花への悲しみが似ていたことを思い出す。

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