第2章 11話 夏澄のいる場所へ

 長い坂道を、風花は自転車で登っていた。


 やっと見えた駐輪場に滑り込み、自転車を停める。呼吸を整えながら、顔をあげた。


 風花が向かう先には、小さな公園がある。

 橋を渡ると、ぬかるんだ地面が続く。大きな湧き水の泉がある公園だ。


 木道を渡っていくと、その泉につき当たる。

 周りは木々に囲まれ、鬱蒼としている。


 湿気を含んだ空気と一緒に、水の香りが漂っていた。


 泉は、夏澄たちと待ち合わせした霊泉だ。

 風花がさっきまでいた図書館からは、自転車で一時間かかる。しかも、道の半分は登り坂だった。


 山の裾野の、人家が途切れる辺りに霊泉はあった。

 見かけは、湧き水の湧く小さな公園だ。藤原の御泉公園と呼ばれている。


「風花っ!」


 明るい、弾んだ声がした。


 夏澄が泉の横に立って、風花に微笑んでいた。

 後ろに、スーフィアたちもいる。


 夏澄の水色の髪と青い瞳が、陽射しを受けてきらきら輝いていた。

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