第2章 12話 久しぶりっ
「夏澄くんっ!」
いっぺんに、風花は笑顔になる。昨日逢ったばかりなのに、ずいぶん久しぶりな感じがした。
夏澄の優しげな仕草も、透きとおった瞳も、やはりまぶしい。
風花は目を細めた。
「久しぶりっ、夏澄くんっ!」
思ったまま口にしてしまい、風花は少し後悔する。
昨日逢ったばかりなのに、久しぶりはないだろう。だが、夏澄はまっすぐうなずいてくれた。
「風花、早くおいでよ」
「今なら人目がないわ。泉のそばに来て」
「うんっ」
スーフィアの言葉で、風花は駆け出す。
泉を囲っている柵を、夏澄と一緒に越えたとき、空間が歪んだ。
急に、泉の周りに、水の幕のようなものが見えるようになる。触れると、波紋が広がって消えた。
「ここ、遠かったよね。だいじょうぶだった?」
「うんっ、平気だよ。自転車だったから、早く着いたし。夏澄くん、今日は隠れてないんだね。いいの?」
「ここは霊泉の結界だから、外からは見えないよ」
「結界っ。ここ、結界の中なの?」
風花はぐるっと周りを見回す。
泉の柵に沿って、水の幕が下りていた。入るときは見えなかったのに、内側からは見えるのだ。
「すごいーっ。わたし、結界なんて初めて!」
風花は水の幕を指でつついた。
また波紋が広がっていった。ぴちゃんと、かすかな音がした。
「遊ぶなよ、風花」
飛雨が眉を寄せた。
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