第2章 7話 うまくいかないこと

「実はさ、私もうまく行ってないんだよね……」


 ふいに香夜乃が声をかすらせた。

 深くベンチにもたれたて、ため息をつく。


「なんか、思ってたのと違うんだよね。先生が厳しすぎてさ」


「え? 香夜乃のほうもだめなの?」


「ちょっと姿勢崩すと、すぐに怒鳴られるんだよね。私がわるいんだから仕方ないけど、あんなに厳しい世界だとは思わなかった」


「香夜ちゃんが我慢できないなんて、怖いトコだね。……もう。せっかく高校生になったのに、どうしてこうなるんだろうねー」


 香夜乃とひろあは、ぐったりとベンチにもたれる。

 そのまま空を眺めていた。


「でも、やめるのはもったいないよ。香夜ちゃん、着物似合うし」


 香夜乃は長い黒髪が似合う日本美人だ。


 時代劇の姫のように立ち居振る舞いがきれいで、特に歩く姿が人目を引く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る