第4章 34話 飛雨の声

「風花ー、お友達よーっ」


  母親のゆり音が、階下から風花を呼ぶ。

 風花はあわてて、階段を駆け降りた。


「どうしたの? 飛雨くん」


 いつも飛雨は、人目を避けて、夜中に窓から来る。


 今日は、宵に玄関からだ。なにかあったのだろうか。


「う、ん……。ちょっと、外で話せるか?」


 分かったと、靴を履こうとした風花を、ゆり音が止めた。


「そんなこといわないで、あがってらっしゃいな」

「い、いえ。もう夜ですし、……よ、用事が済んだら帰りますので」


  なぜか、飛雨の声は裏返る。


 いつもに比べて、ずいぶん礼儀正しいなと、風花は思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る