第4章 33話 早く

 夕食を終えた風花は、自分の部屋に駆け込んだ。

  滑り込むように、床の上にすわる。

  ぎゅっと目を閉じて、瞑想を始めた。


  早く霊力が欲しい。早く、早く……っ。


 夕闇の川原の風景が浮かんでくる。

 あっという間に消えていった、夏澄の姿が思い出された。


 目に涙が浮かぶ。


 早く霊力を身につけたい。もう二度と、置いていかれないように。


 三十分くらいたったあと、風花は手を見つめた。だがやはり、霊力の光は現れない。

 泣きたくなって、風花は床に寝転がった。


 こんなに、がんばっているのに、なんで。


  わたしなんかじゃ、霊力なんて一生無理……?


 風花が目を閉じた時、家の呼び鈴が鳴った。


「はーい」

 母親の声と、ドアを開ける音がする。


「こんばんは。風花さんの友人ですが、風花さんいらっしゃいますか?」

 そんな声が続いた。


 あれ、と思い、風花は階下を覗く。

  声が飛雨に似ていたからだ。だが、彼が堂々と玄関から来るはずはない。


 風花は一瞬、自分の目を疑った。 玄関には、本当に飛雨が立っていた。

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