第4章 32話 置いてけぼり

「急にごめん、風花。また……」


「風花。本当にごめんなさい。今度埋め合わせするわね」


「あ……」

 風花は身を乗り出した。


 わたしも行く。そう、いおうとする。


 だがすぐに、夏澄の姿は、風花の目の前でかき消えた。


 結界を解いたからだろう。 スーフィアも見えなくなる。


  辺りは嘘のように静まり返った。


 冷たい風が流れていった。


  風花はぼんやりと巻層雲を見つめる。目に涙が浮かんできた。


  やがて、辺りは青い闇に染まり始めた。


 きらきら輝く水面が目に沁みた。

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