第3章 7話 飛雨と夏澄の出会い

 どうしようもないよな。と、飛雨はわらう。


 夏澄は、荒れる飛雨をずっと見守っていた。


 家を捨てきれずに、屋敷にもどったときも。また斬り捨てられたときも。飛雨を庇った母親が処刑されたときも。


 飛雨が復讐を始めたときも。


 一年くらいの間、遠くから様子を窺ってくれていた。


「本当に優しいね」


「ああ。それに夏澄は、兄上にオレのこと頼まれていたみたいなんだ」


「飛雨、お兄さんがいたの?」

 風花は顔をあげる。


「ああ、オレの自慢の兄。家の世継ぎでさ、武術に長けて人望もあって、徳もあって完璧だったんだぜ」


 飛雨はなつかしそうに、瞳を細めた。

 彼のこんな柔らかい表情は、初めてみた。


「お兄さんに逢いたい?」


「全然。……でも、謝ってないからさ。オレがいい気になって霊力なんか使わないでいたら、家が荒れることもなかったかなって。……それに」


「なに?」


「兄上と約束したんだ。一緒に家を盛り立てようって。だから、あんなに弓をがんばったのに、果たせなかった」


 飛雨は瞳を伏せる。静かな夜のような瞳だった。

 風花は必死で言葉を探した。

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