第4章 53話 春ヶ原と立貴

「優月を癒やしたときのことだけど……」


 夏澄の声は細い。


「春ヶ原の結界が弱っているのに気づいたんだよ」

「弱ってる……?」


「立貴の霊力が弱っているのが原因だと思う。よ。きっと、いつも風に襲われて疲弊しているんだ」


 立貴くんが……?

 風花はぼんやりしてしまう。


 風の影響がそこまで強いとは思わなかった。


 本当に壊れる? 春ヶ原が? 

 動物のみんながあんなに幸せそうにしているのに。


「春ヶ原を襲う霊力は、思ったより強いのかもしれない」

「あそこは、夏澄くんの故郷と似ているんだよね」


「ありがとう、風花。うん、似ている。だから、護りたいんだ」


「夏澄くん……」


「俺、春ヶ原を護りたい」

  夏澄は、願うような瞳をしていた。

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