第3章 23話 うさぎとにわとり

「あの、だいじょうぶよ、飛雨くん」


 風花は身を乗り出した。


「さっきもいったけど、うちのパパは獣医なの。パパの職場か、それがだめでも、わたしの家で引き取れるから。あの子は精霊に引き取ってもらいたいみたいだけど、パパの職場なら仲間のうさぎもいるし」


「それも他力本願だろ」

 飛雨は眉を寄せる。


「風花の力じゃないだろが。無責任じゃないか?」

 風花はうなだれた。


 ……初めて、夏澄くんの役に立てると思ったのに。


「もう、それはいいわよ、飛雨」 


 スーフィアは、やけに優しげな瞳をする。


「なんだよ、それって」

「それはそれよ。分かるでしょ」


「なんだよ」

「それはそれでしょ」

「わからねーって」


「だから、怒ってるふり。内心疲れているでしょ。無理はやめたら? そんなに説教しなくたって、夏澄はもう境界を越えたりしないわよ」


 スーフィアの言葉に、飛雨は瞳をきつくする。


 返事をしない。


 無表情のまま、スーフィアに背を向ける。

 早足で歩き出した。

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