第3章 50話 春ヶ原の憂い

「三年くらい前からでしょうか。たまにこんなことが起こるのです」


 優月の言葉に、夏澄は瞳を伏せる。


 彼の足元の泉に、そんな夏澄の姿が映って揺れていた。


 雨水が流れて地面はぬかるみ、すわれなくなっていた。

 ただ立ち続けるのもつらく、風花たちは泉の周りを散策していた。


 ぽつぽつとしろつめ草についている水滴は、葉を深く染めていた。


 清浄な雨の香りがしている。


 風花は、そのしろつめ草の上空に視線を移す。

 さっき、泉のようなものができた場所だ。


 空の泉……。


 さっき、立貴が空に造った泉が思い出される。


 雪割草の精霊が見たのは、やっぱりさっき立貴くんが造った、泉なのかな?


 空に湧く泉の噂は間違いなのかな?


 風花はぐるぐると、そんなことを考えていた。


 気がつくと、優月の話を聞き漏らしていて、あわてて耳を傾けた。

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