第5章 41話 弟ができたようで

「立貴は頻繁に通ってくるようになり、やがて禁足地に住むようになりました」


 よかったと、風花が伏せ目がちに微笑んだ。


「山頂が気に入った立貴は、霊泉を湧かしてくれました。そして……、さらに自分が閉じ籠もれるように、結界を張りました。それが、春ヶ原の始まりです」


 立貴が自分のために張った結界でも、そのお陰で山頂は緑で溢れた土地になった。


 草花は夢を見るような瞳でいた。動物たちと、はしゃいでいた。


 立貴は皆のために、結界内の気候を春のものに変えてくれた。


 いつも無表情で、口もほとんどきかない立貴だったが、いつの間にか変わっていた。


 彼は優月に、頼るような、甘えてくれるような瞳を見せることがあった。

 弟ができたようで、うれしかった。


 あのころが一番幸せだったなと、優月は瞳を伏せた。


 ひとつずつ夢が叶っていって、每日が輝いていた。

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