第5章 65話 家にいる安心感

 風花の家族の会話のバックには、よく音楽が流れている。それは風花の家の特徴だ。


 街でも、学校でも、どんなに騒がしい場所に行っても、クラッシックと雑談を同時に聞くことはあまりない。


 だからこれを聞くと、家にいるんだと安心できる。さっきまでの重かった気分も消えていた。


 ありがとう、ママ。

 月お兄ちゃん、星お兄ちゃん……。


 そういえば、この音を聞くのは久しぶりだと、風花は思った。


 最近は夏澄たちのところに行ってばかりだったから、ゆり音の演奏を聴く時間もなかった。


 風花は息をつめる。


 あたり前だったゆり音たちの声と、聴きなれた音楽を、少しだけ昔のことのように感じた。


 いつの間にか、ゆり音たちとの距離が開いている。


 住む世界が少しだけずれている。

 ふいに、そんなことを思った。

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