第5章 5話 万が一

「それにさ……」


  飛雨は表情を消し、天井を見る。


「春ヶ原の風の霊力は弱いぞ。もし、夏澄に当たったとしても、夏澄なら蚊に刺されたようなダメージしか受けないよ」


「じゃあ、わたしだっていいでしょ」

 風花は身を乗り出した。


「それは無理。ただの人のお前が受けたら、天国行きかもしれないぞ。オレだったら、寝込むくらいかな」

 風花は青ざめた。


 優月が霊力を受けたとき、体調を崩しただけだと聞いていたから、自分もその程度で済むと思っていた。


「なんか、思ってたより危ない……。飛雨くん、だいじょうぶなの?」


「オレは鍛えてるから、華麗に避けられるよ。防御もできるし。オレとスーフィアに任せておけばいいんだよ」


「万が一ってことがあるよ。もし、夏澄くんが怪我したらどうするの?」


 飛雨は目を見開く。 硬直したように動かなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る