第5章 2話 優月さんに音楽を

「ねえ、飛雨くん……」


  飛雨はいつものように、風花のベッドに寝転がっている。


 すっかり彼の定位置と化していた。 風花を女と思っていないと、失礼な発言も連発する。


「考えたんだけど、わたしにできるのは優月さんの気持ちを癒やすことくらいなんだ」


「まあ、霊力が身につくまではな」


「優月さん、なにを喜ぶだろうね? 肥料とか霊泉水くらいしか思いつかなくて。……音楽を聴いてもらうのもいいかなって思うけど、どうかな?」


「音楽?」


「わたし、オカリナなら吹けるの」


  風花は、机の上に出しっぱなしだったオカリナを手に取った。


 暗闇の中、瞳を凝らすようにしていた飛雨は、机の上で視線を止める。


「ちょっと待て……」


 オカリナの隣に置いてあった、ヘルメットを凝視した。


「お前、なんでまだヘルメット常備しているんだ? 必要ないっていったろ」


 まずいと、風花は机の前に回る。 ヘルメットを背中で隠した。


 中学の時の自転車通学で使っていた、学校指定のヘルメットだ。

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