第5章 春ヶ原の光と影

第5章 1話 優月来泉

 ガラス戸から、涼やかな夜風が流れ込んでくる。


 かすかに若葉の香りを含んだ、緑の風だ。


 風花の部屋のガラス戸の向こうには、ベランダガーデンがある。

  西洋木蔦、棕櫚竹、ミニバラなどが植えてあり、さわさわとリズムのいい葉音を立てていた。


「本当……?」


 瞑想をしていた風花は、飛雨の言葉に振り返る。


「ああ、優月が明日から、藤原の御泉に来る」


「優月さん独りで? みんなも来ればいいのに」


「草花たちは動物のみんなと来るって張り切ってたみたいだけど、霊力で護るのは大変みたいだ。立貴と一緒に春ヶ原を護るってさ」

「……そうだよね」


「優月は長く滞在するみたいだし。霊泉のこととか、霊力が強い精霊のこととか、勉強したいんだってさ」


「じゃあ、協力しないとね」


 明日ね。


 ちょうどゴールデンウィーク中で、学校が休みだ。

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