第6章 14話 優月の姿

 夏澄は両手を水色に光らせる。風花の背中に当てた。

「守護の霊力が弱かったみたいだ。張り直させて、風花」


 やがて、焼けるようだった苦しさは引いていった。


 安堵したように、夏澄は大きく肩を落とした。


 だが、すぐに立ち上がり、瞳を閉じる。


 彼の体から放たれた水色の光が、辺りを巡る。照らすように広がった。


 スーフィアも、自分の霊力で周りを満たした。

 荒れ狂うように吹いていた風が、収まり始めた。


 振りかえった風花は、優月で目を止めた。


 優月は木々の間に横たわっていた。


 苦しげに瞳を見開き、信じれないというように、体を強張らせている。ただ風を見つめていた。


 やがて、風が止む。

 風花は息をつめて、両手で口元を覆った。


 霊力を放ちすぎたからか、優月の姿は、ほとんど見えなくなっていた。


 彼は怯えるように、自分の体に視線を向けていた。


 やがて、彼の姿は霞むように消えた。

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