第6章 15話 かすかな気配

 優月さん……!


 風花は駆け出した。

 辺りを見回す。だが、どこにも優月の姿はなかった。


 公園には柔らかな朝日が差している。

 優月の霊力の色に似た、優しげな朝景色だ。淡い光はいたるところにあふれているのに、優月の姿だけ見えない。


 なんで……。


 目に涙があふれてくる。風花はへたり込んだ。


「風花、落ち着いて……」


  夏澄が風花の肩に手を置いた。

「優月はまだ精霊でいるよ。ほら……」


  夏澄は左側の林を指差した。そこには弱い風が草を揺らしていた。優月の風なのだろう。


「本当に? 夏澄」


 スーフィアは厳しい表情で公園内を見まわす。


「私には、もう優月の気配は読めないわ」


「かすかな気配だけど、感じるよ。優月はまだ、消えないでくれている」


「夏澄なら気配で、優月の居場所を読めるよな?」


 飛雨が跳躍して、夏澄のとなりに立った。


「うん、早く捜さないと」


  夏澄は一歩踏み出す。気力を集中させるように瞳を閉じた。


 動かない彼の体から、揺らめくような霊力の光が発せられた。

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