第4章 42話 霊泉の東屋で

 夏澄くんたち、帰ってこない……。


 霊泉近くの東屋でひざを抱え、風花は縮こまっていた。


  街灯が一本あるため、辺りはぼんやり明るい。

  闇の中にいるわけではないのに、風花は落ち着かない。


  公園を取り囲む夜更けの空気が、心を縮ませるのだ。暗がりからなにかが出てきそうな気がする。


  時間が経つにつれて、不安が積みあがっていた。


 もう十時だ。

  風花が公園に来てから、一時間が過ぎていた。


 強い風が吹いた。 葉ずれの音が、迫ってくるように響く。

  風花は小さな悲鳴をあげた。


  は、は、早く帰ってきて、夏澄くん……っ。


 もしかして、優月さんの体調、すごくわるいのかな。

 それとも、夏澄くんたちになにかあったとか……。


 夏澄くんなら、すぐに優月さんを癒して、帰ってくると思ったのに。


  風花は頭を振った。

  闇に飲まれて、嫌なことばかり考えてしまう。


 帰ってくるんだよね?

 は、早く来てー、夏澄くんっ!


  ぎゅっと手を握って、風花は辺りを見まわした。

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