第4章 43話 夏澄が呼ぶ声

 いくつも風が流れて行き、月や星も動く。


 寒いと、風花は腕をさすった。

 体が小刻みに震え出すが、冷えのせいなのか、恐怖のせいなのか、よく分からない。


  ……そうだ、家に連絡。


  風花は動きにくい指で、『もう少ししたら帰るね』と、メールを送った。


 ディスプレイには、家からの着信が三件、表示されていた。留守電にしてあるのだ。


「……」


 風花は目を瞬き、辺りを見まわした。


 ふいに、風花の名が呼ばれたからだ。


「夏澄くん……!」


 夏澄の声だった。 心に灯りがともったように、暖かくなる。


  風花はいそいそと立ちあがる。だが、どこを見ても夏澄の姿はなかった。


「夏澄くんだよね、どこ?」


 相手は応えない。 少しして、『風花』ともう一度声がした。


 風花は身構えた。

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