第4章 44話 水色の光

 ……普通の声じゃない。


  風花は血の気が引いていくのを感じた。


  耳から聞こえる声というより、頭の中に響くような声なのだ。


  幻聴? もしかして、お化けか妖怪……?!


 風花は悲鳴をあげて、東屋の隅に走った。柱に擦りよる。


 ……風花。


 また名が呼ばれた。声はだんだん近くなっている気がした。


 混乱して、近づいてくるなにかを避けようと、鞄を振り回す。


  ……ごめん、すぐ結界張るから。 声が続く。


「結界……?」


 目の前の空間が水色に光る。 やがて、夏澄が姿を現した。


  風花は呆ける。 振り回した鞄の端が、夏澄の腕に当たった。


「ごめん、夏澄くんっ。だいじょうぶ?」


  いった時、後頭部に殴られたような痛みが走った。


  ……今度はなに?


「お前ー」


 振り返るのと、押し殺した低い声が響くのは同時だった。


「夏澄の御尊腕に、なんてことすんだ?!」


  いつの間にか、飛雨が背後に立っていた。拳を握っている。


 彼が風花の頭を殴ったらしい。

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