第6章 7話 夏澄の願い

「ねえ、優月。俺にできることはない?」


 夏澄の頬に水色の髪がかかる。その向こうの瞳は透明に潤んでいた。


「俺はね、優月たちが好きだよ。春ヶ原も大好きなんだ。優月たちにも草花、立貴にも、春ヶ原で幸せになって欲しいんだ」


「……夏澄さん」


 消え入りそうな、かすれた声がした。優月の声だ。


「わたしがいなくなったら、草花はどう思うでしょう」


 優月はゆっくりとまぶたを開けて、夏澄を見る。表情のない瞳だった。


「え?」


「想像で構わないので、教えていただけませんか? ……夏澄さんの幻術で見せてもらうのはどうでしょう」


 夏澄はふしぎそうに優月を見る。


 だんだんと、その瞳を輝かせ、笑顔でうなずいた。


「うんっ、待っててっ!」


 まぶたを閉じる。

 彼の体が澄んだ水色に光り出す。


 だか、その光はすぐに消えた。


 夏澄はなにか思いついたように振り返り、スーフィアと風花を手招きした。

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