第4章 12話 人の世の在り方

「だから、思ってないよ。矛盾?  意味が分からないよ……?」


「オレは夏澄みたいに優しいだけにはなれない。それでも、夏澄みたいになにかを救えれば、それでいいんだよ。結果が大事なんだ」


 飛雨はしばらく柵に立っていた。やがて、風花に背を向けて手を振った。


「じゃあな、風花。また明日」


 続けて、いい過ぎたごめん、と小さくつぶやいた。


「あ、あの。今日は訓練をありがと」


「練習のし過ぎで、成績が落ちないようにしろよ。夏澄が心配してたぞ」


  夏澄というきらきらした名に、風花はうれしくなる。


「うん。夏澄くんがいうならがんばるっ。わたしね、獣医になる夢があるの。……あっ。でも、癒しの霊力があれば、動物は救えるよね。もう勉強しないで済むかな」


「ばかなこと考えるなよ」


 飛雨はきっぱりといった。


「え? なんで?」

「人の世界の在り方から、離れたらだめだ」 「だってわたし、元がばかだから、成績上げるの大変で……」


「じゃなかったら、もう霊力教えないからな。自分の居場所忘れるなよ」


  なんで?  不満を顔に出す風花に、飛雨はため息をついた。

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