第3章 21話 夏澄とうさぎ

 空気が痛い……。


 風花たちは、山頂に続く坂道を歩いていた。


 さっきまでは、笹原や枝葉があって足を踏み入れる隙がなかったが、山頂近くになって、急に辺りが開けた。


 風花たちを取り巻く空気は、ぴりぴりしていた。

 飛雨が放つオーラのせいだ。


「ルール違反だぞ、夏澄」

 また飛雨の小言が始まった。


「自分の手に負えないことは、引き受けない約束だったろ?」


「ごめん……」

 夏澄は腕の中のうさぎを抱きしめる。


 さっき、ワンピースの少女に頼まれて、引き取ったうさぎだ。

 ワンピースの少女は精霊だった。半泣きで、うさぎの貰い手を探していた。


 自分で世話はできないのだが、夏澄はすぐにうさぎを引き取った。

 それを見て、飛雨の小言が始まった。


 風花は少し驚いていた。


 いつもは夏澄を尊崇している飛雨が、こんな風に彼を叱責することがあるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る