第2章 41話 森の中の影
霊泉の南にある山の中、ひとつの影が闇に紛れていた。
影は樫の木の枝に身を乗せている。幹に体を預けて、星を数えながら時間を潰していた。
月はかなり高い位置まで移動している。
あれから、ずいぶん時が過ぎた。
水の精霊たちはもう眠っただろうか? 結界の中で、なにかが動く気配は、ずっとしていない。
影はゆっくりと立ちあがった。
枝を蹴って、霊泉のとなりの林めがけて跳躍する。
唸る風を楽しむように耳を澄ませながら、消していた自分の気配を露わにした。
露わにした気配を、また試しに一瞬で消してみる。木の上に降り立った。
今度は、精霊たちが出てくることはなかった。
水の精霊は自分の気配を読めないでいる。眠っていれば、先刻以上に御しやすいようだ。
……気配を消さなくても、近づくことができる。水の精霊の霊力は弱くなっている。
それだけ確かめると、影は山の中へ消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます