第4章 8話 星夜の訪問

「風花、まだ起きてるのか?」


  兄の星夜の声だった。


  風花には月夜と星夜の二人の兄がいる。

 兄たちは双子で、一卵性双生児だが、口調が違うから分かる。


 「うん、起きてる……」


  飛雨は素早く立ちあがると、音も立てずクローゼットに入り込んでドアを閉める。

 足自慢なだけあって、きれいな動きだった。


「なんか、話し声がしたから。開けるぞ」


「ま、待って……!」


 風花はドアに駆け寄る。

 途中でクッションを踏み、体勢を崩して四つん這いになった。


「どうしたんだよ」


  顔を覗かせた星夜が低くつぶやく。 あわてたように手を差し出してきた。

 風花が立ち上がると、室内を見回した。


「誰かいたみたいだったけど」


  声、聞こえたんだと、風花は青ざめた。


  動物が多い風花の家は、防音工事がしてある。だから油断していた。

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