第1章 19話 納得するな
「なつかしいわー」
スーフィアが、遠くにあるなにかを見るような瞳をした。
霧の水輪は、風花たちの周りきらきらと舞っている。風花は中のひとつに手を近づけてみた。水しぶきが手に飛んだ。
「私はね、夏澄が住む水の精霊の国の近くの海に住んでいたの。水輪はそこからも見えたけど、夏澄の国にあがらせてもらって見たこともあるのよ」
「いいよなー。オレも行ってみたいよ」
飛雨が心底うらやましそうにする。
風花は、あれ、と思った。
夏澄たちは、みんな同じ精霊だと思っていた。
だが、違うらしい。水の精霊と海の精霊は、別のものといういい方だ。
夏澄は水の精霊の国に住む、水の精霊。スーフィアは海に住む海の精霊なのだろう。
そういえばスーフィアは、夏澄は仁愛の精霊だといった。
夏澄は自分の身を護れないから、スーフィアたちが護っているとも。そういうところも、スーフィアと夏澄は違うのだ。
じゃあ……。
「飛雨くんはなんの精霊なの?」
「なんで、そんなこと訊くんだよ」
夏澄の幻術に夢中になっていた飛雨は、笑顔を消す。
「飛雨は人間よ」
押し黙る飛雨の代わりに、スーフィアが答える。
「霊力は私と同じくらい強いけど、精霊じゃないの」
「あ、そうなんですか」
いった風花を、なぜか飛雨は驚いたように見た。
「そうなんですか、は、ないだろ」
「え?」
「驚けよっ。すぐに納得するな。あなたみたいな素敵な方が精霊じゃないなんて、信じられません、だろがっ」
飛雨はわめき散らした。
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