第3章 12話 長い髪と白いワンピース
少女は中学生くらいだった。
かわいらしいという表現がぴったりの子だ。
かなり華奢で、長い髪と白いワンピースがよく似合う。
大事そうになにかを抱いているが、枝葉に隠れて見えない。
少女はじっと風花を見ていた。
なにかを探るように、頭から足の先まで風花を見る。
だんだんと、瞳に怯えの色が浮かぶ。
急に向きを変えてかけだし、山の中に消えていった。
「どうした?」
「今、女の子がいたの。わたしたちの様子を窺ってた」
飛雨は頬に緊張を走らせる。
「どんな奴?」
「中学生くらいの子。大人しそうで、白いワンピースの」
「ワンピースって、あのひらひらした? この陽気に薄着で? 夢でも見たんじゃないか?」
「そんなことないよ」
「ここは人家だってないんだぞ。そういう場所を選んだんだから」
「でも……」
「夏澄が見られたんじゃないから、どっちでもいい。もう行こう。夏澄が待ってる」
飛雨は、両手で風花を持ちあげた。
そのまま、軽々と肩に乗せる。
……え?
米俵でも担ぐように、肩に担いだのだ。
……ええ?!
ぐんと、体が宙に浮く。風が唸りをあげた。
飛雨が木々を越え、高く跳躍したからだ。林を飛び越えたあと、岩場に急降下する。落下の感覚に、お腹の辺りが悲鳴をあげた。
風花は金切り声をあげていた。
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