第3章 11話 細身の少女

 車内でバス停の名を告げるアナウンスがあった。飛雨がブザーを押す。


 やがて、バスはゆっくり停車した。


 山の中腹の、鬱蒼とした木々が続く場所だ。狭い車道で、他に走行している車はない。

 ほとんど人が来ないほどの、山奥に来たと分かった。


 バスの運賃は風花が払った。飛雨は精霊と暮らしているため、所持金がゼロなのだそうだ。


 バスから降りた飛雨は大きく体を伸ばした。

 風花も深呼吸する。水分を多く含んだ大気が体の隅々まで入ってきて、風花は笑顔になった。


「あれ」


 風花は向かいの木々に向き直る。


 幹に隠れるようにして、人影が見えたからだ。


 陽の光がななめに差し込む、


 幻想的な林の中。細身の少女が、そっと風花たちを見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る