第3章 38話 春ヶ原と草花

「とても、美しいんですね」


 スーフィアが微笑んだ。


「本当に。……でも」


 夏澄はいい淀む。

 なんでしょうと、優月は笑顔で促した。


「春ヶ原では、この近辺の精霊に動物たちを預けていると聞きました。育てきれなくなっているんですか?」


「ついこの間まで、狩猟期間でしたから」


 優月は瞳を伏せた。


「今年は怪我をする仔が多くて、草花がどんどん春ヶ原に招き入れたのです。それで、ここのしろつめ草のほとんどが失われました。周りの精霊にうちの仔たちを引き取ってもらい、野原はやっとここまで回復したのです」


 抑揚のない口調で続けた。

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