第3章 39話 桃色しろつめ草

「でも、早く復活できたんだな。霊力でか?」


 長い間、むっつりと黙り込んでいた飛雨が、やっと口を開いた。


「はい。幸いにも茎は無事でしたし」


「なんで、茎が無事なだけで回復するんだ?」


 飛雨がふしぎそうにいう。

 

 夏澄たちも、首を傾げた。


「あ、あのね、夏澄くん。しろつめ草の茎って、地面を這ってるもののことなの。あの、根っこみたいなのが茎なんだよ。匍匐茎っていって、普通の茎じゃないの。匍匐茎が無事だと、葉はたくさん出てくるんだよ」


「詳しいんだね、風花」


「パパから聞いたの。パパは獣医だけど、植物にも詳しいんだ」


「そういえば、春ヶ原の植物は、桃色しろつめ草と木々だけなんですね。葉を食べられても枯れない植物を選んだんですか?」


「いえ……」


 優月は首を振る。

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