第6章 32話 優月の幸せ

「風花、どうしたの? ぼんやりして」


 スーフィアが隣に舞い降りてきた。ふわっと、金の髪が波打って揺れた。


「いえ……。みんな元気そうでよかったなって」


 本当よねと、スーフィアは空を見上げる。


「春ヶ原が変わりなくてよかったわ。こうやって招待してもらえるまで、不安だったの。……優月は幸せそう。でも……」


 スーフィアは優しい瞳をして、風花を見る。


「風花は、優月が本当に幸せだと思えないのよね」


 悲しげに瞳を細めた。


「思えないって……」


 急に訊かれ、風花はうつむく。


 言葉が見つからなかった。

「私も同じよ、風花。優月はこれからも、きっとつらい思いをするものね」


 いたわるような優しい瞳で、スーフィアは風花を見た。


 スーフィアは手を泉に浸すと、愛おしそうに、指先で水面に輪を描く。


 彼女は、急には立ち上がる。


 肩の布を外して風花を包んだ。

 桃色の透き通るような薄い布で、スーフィアはそれを天女のように肩から掛けていた。

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