第6章 33話 立貴の気持ち

「お礼よ、風花」


 スーフィアの肩掛けは軽いのに暖かい。


「今回、風花は本当にがんばってくれたもの。風花の気持ち、すごくうれしかったのよ」


「霊力がないから、たいしたことはできなくて……」


「一生懸命な気持ちが伝わってきたから、それがうれしかったの。ねえ、風花。こうするとね……」


 こうすると、春ヶ原の幸せを感じ取れるわと、スーフィアは瞳を閉じる。


 風花も真似をしてみた。


 目を閉じて、辺りの様子を探る。

 まず、風に乗る花の香りがした。


 草花のわらい声が響いていた。


「優月たちは、前より幸せそうに見えない? 立貴も優月を見守ってくれるって。立貴は優月の悲しみに薄々気づいてたみたい」


「立貴くんが、ですか?」


「これからは、立貴も優月を護ってくれるわ。優月の憂いもいつか消えるわよ」


 ……そう、ですね。


 瞼の裏に涙が浮かぶ。


 優しい精霊には、幸せになって欲しい。


 願うように風花は思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る