第5章 49話 風が渦を巻く

  飛雨は駆け出し、軽々と風を避ける。


 スーフィアは優月の腕を取って、一緒に跳躍する。彼女の桜色の衣が、流れるようになびいた。


「平気か? 夏澄」


 飛雨も、添うように夏澄の隣で足を止める。

 身構えながら、左右に視線を走らせた。


「ありがとう。飛雨も気をつけて」


 夏澄は林の前にも霊力の壁を張る。風は壁で跳ね返る。


 跳ね返った風の多くは、広場の中央に集まる。中央にあるのは乾いた砂だけだ。

 運良く、草は生えていない。


 風は砂埃を上げながら、吹き荒れていた。風の中に混じっている枯れ葉が渦を巻く。


 風が唸る音、枯れ葉がすれる音。


 山頂の静かな広場に響いていた。


「……!」


  風花は小さく悲鳴をあげた。

 

 風のひとつの流れが、スーフィアを掠めたからだ。 スーフィアはバランスを崩して、地面にひざをつく。


 優月がスーフィアを助け起こした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る