第1章 14話 桜の枝

「私が癒すわよ。あなたは今、幻術でここを外から見えなくしているでしょ。無理はだめよ」


「いや、オレが癒す」

 飛雨も駆け寄ってきた。


「飛雨は癒しの霊力はないでしょ」


「夏澄にオレの霊力を送って、それで癒すんだ。そうすれば夏澄に負担はかからない」


 スーフィアはため息をついた。


「なんで、そんな遠回りしなきゃならないの?」

「だってオレ、今日なんにもしてねーもん」


「あ、あの……」

 風花は声をかすらせて、一歩踏み出す。

「わたしもなにか手伝いを……」

 

 飛雨は疎ましそうに眉を寄せる。

「お前は霊力ないだろ」

「気にしないでいいのよ。風花」


「でも、桜を折ったのはわたしで……」


「夏澄、オレとやろう。オレとだ、オレと」

 飛雨は折れた枝の真下に立った。


「……じゃあ、みんなでやろう」


 やわらかい夏澄の声が響いた。夏澄は嬉しそうに瞳を細め、風花たちに視線を巡らせる。


 風花の手を取って自分の手と重ね、枝に当てた。

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