第1章 13話 夏澄の癒やし

「お、おい、夏澄」


 飛雨が声をうわずらせる。

「出てきたらだめだよ」

「ごめん。でも……」


 夏澄は風花の体を起こし、幹に寄りかかるようにすわらせた。

 擦りむけた風花のひざに手をかざす。すると、なぜか痛みが引いていき、傷も消えていた。


 夏澄はほっとしたように肩の力を抜く。春のように優しく微笑んだ。


「今のは癒しの霊力だよ。初めまして……、でいいかな? 風花」


 近くで見ると、青い瞳は透明感があった。瞳の奥が深い青に揺れている。

 ありがとう、といいたいのに、風花は言葉にできない。


 心がくらむ。

 夏澄のすべてがきれいすぎて、幻のようだ。


 夏澄は風花の手から桜の枝を抜いた。折れた部分を元のように木につける。また手をかざした。


「待って」


 スーフィアがふわっと跳んで、夏澄のとなりに降り立った。

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