第3章 3話 蓮峯山の水伝説

「えーっとね、蓮峯山の山々の間にある湖には、竜が住んでいる。池に大蛇が住んでいる」


「いろいろあるんだな」


「竜の伝説はいい話だよ。昔は悪事を働いていた竜が、改心して、山の周り一体を護ってくれるようになったんだって」


「心は変えることができる。そういう話はオレも好きだよ」

 飛雨はめずらしく、優しげに微笑んだ。


「まだあるよ。蓮峯山には、栄寿の水、命の水、姫の水が湧いている」


「人の世界の伝説は、やっぱ精霊界の伝説とは全体違うな」


「役に立った? まだあるよ。奈良時代に山から病を治す霊泉が湧いた。霊泉だよ。すごいでしょ

 

「へえ……」


 飛雨は声を漏らす。


「それ、いいんじゃないか? きっと夏澄も喜ぶよ」

「ほんと?」


「奈良時代か。オレが生まれた時には、もう湧いてたんだ。でもオレは知らなかったよ。ありがと、風花」


 生まれた時にはもう湧いてた……。

 変ないい方をするなと、風花は思った。


「奈良時代なんて大昔だから、湧いてるよね。……飛雨くんって、いつ生まれたの?」


「戦国時代。死にかけていたところを、夏澄に助けてもらってな。夏澄たちに着いていくために、不老不死になったんだ」


 風花はぼんやりする。

 一瞬、意味が分からなかった。

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