第6章 36話 草花への幻術

 風花は辺りを見まわす。


 蜜柑の木の根元に夏澄を見つけた。ちらっと彼を盗み見る。


 夏澄は優月と楽しげに話していた。


 となりにでは草花が、ひよこのけん玉と竹とんぼに蜜柑をつつかせて遊んでいる。


 うさぎの小毬が夏澄に擦り寄る。


 すると草花も夏澄に寄りかかり、ひざに顎を乗せた。


「草花、いつの間にかあんな夏澄になついて」


 スーフィアも夏澄に視線を移す。


 声は聞こえないが、草花は夏澄にねだるように両手を合わせる。

 夏澄は笑顔で草花の頭を撫でる。姿勢を正して瞳を閉じると、夏澄の体が水色に光り出した。


 蜜柑の木に星水雨が降り注ぐ。夏澄の幻術だ。

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