第3章 36話 草花と立貴

 蜜柑の木のとなりにある泉のほとりにも、少しだけ地面がのぞいているところがあった。


 そこには、さっきのワンピースの少女がいた。


 正座をして泣きべそをかいている。麦わら帽子をかぶっていた。


 隣には、彼女を見張るように少年が立っている。腕組みをして、蜜柑の木に寄りかかっていた。


「先程は、彼女が無理難題を押しつけたようで、申し訳ありません」


 優月が苦笑いした。


「ああやって、反省させておりますので。……彼女は、桃色しろつめ草の精霊で、草花そうか。隣は湖龍の一族の立貴たつきです」


 龍というだけあって、立貴はきつい顔立ちをしていた。

 服も群青の和装で、草花たちと雰囲気が違う。


 優月は白いスラックスと、立ち襟のシャツを着ていた。優雅で、どこか貴族のようだった。


「あの……、初めまして」


 風花の言葉に、立貴は黙ったままだった。

 軽く頭だけを下げた。

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