第5章 37話 子桃と雛桃

「草花は桃葉を、うさぎママと呼んでいました。


 桃葉は二匹の仔うさぎを連れていて、草花の葉で育てていました。


 草花と本当の家族のようでした。


「種族を越える家族なんて、素敵ね」


 頰杖をついているスーフィアが微笑む。


「でも、草花の葉はすぐ、なくなってしまいます。草花は精霊の力で葉を伸ばしますが、当然足りません」


「……仕方ないわよね」


「桃葉は、仔うさぎの子桃こもも雛桃ひなももをつれて、他の場所に葉を探しに行くようになりました」


 優月は一度、言葉を止めた。


  他所に行くようになってから、一週間くらいで、子桃の姿が消えた。


 イタチに襲われたということだった。


 桃葉と草花は泣いてばかりいた。

 その後も、草花はしばらく口をきかなかった。

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