第3章 25話 雨が混ざった風

 ずっと登り坂だった道が、木々の向こうで途切れていた。


 頂上についたのだ。頂上といっても低い山なので、登るのはそれほど苦にならなかった。


 夏澄が駆け出した。風花たちは後を追う。


 登りきったところで、道を塞いでいた木々をかき分ける。その向こうにあったのは岩場とまばらに生えている木々だった。


「ここが、春ヶ原?」


 春ヶ原は一年中、季節が春の野原だったはずだ。

 だが、目の前にあるのは、冬に近い風景だ。


「場所、間違えたのかな?」

「なにいってんだ、風花。夏澄が間違うわけないだろ」


 ふいに、さあっと風が吹いた。風には、なぜか雨が混ざっていた。

 大粒の雨が両目に入る。

 風花は声をあげて目を閉じた。


 やがて目を開けた風花は息を飲んだ。


 焦って駆け出し、あたりを見回す。山頂から、夏澄とスーフィアの姿が消えていた。

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