第5章 31話 水の精霊の心

「どうかした? 優月」


 夏澄が、まっすぐに優月を見ていた。


 首を傾げ、少年らしい無邪気な瞳で、問うようにする。


 なんて美しい瞳なんだろう、と優月は思う。


 たまに、どきっとするくらい、彼は純粋な心を持っている。


 泉から湧き出たばかりの、澄んだ水のようだ。


「いえ、なんでもありません。……星水雨、本当に美しいですね」


「春ヶ原のことが心配?」


 夏澄は悲しげな色に瞳を染める。


 彼は、素直に感情を顔に出す。と、優月は思った。


 見た目は幼くても、歳は優月とは比べものにならないくらい上のはずだ。


 なのに、心は少年のままだ。美しすぎて、胸がつかれる。

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