第3章 33話 春ヶ原の小川
過去に想いを馳せ過ぎたのか、かすかな目まいがした。
風花は頭を振る。
となりの夏澄は、ずっとなにもいわない。ただじっと、春ヶ原を見ていた。
あの飛雨でさえも、まぶしそうに瞳を細めている。
「気に入っていただけましたか?」
優月は足を踏み出す。
風花はうなずいた。
「ではこちらへ。と、いっても、もてなすようなものは、なにもない野原ですが。休息の場だけはあります。……ただ」
優月は一度言葉を止めた。気遣うような瞳をする。
「水路は平気ですが?」
いって、飛雨と風花を見た。
「水路?」
「しろつめ草で覆われているから、道がないんだ。俺たちは宙から移動できるけど、人が歩けるのは、その小川だけなんだ」
夏澄が風花のとなりに立つ。
彼の言葉で、水路というのは野原を巡っている小川のことだと分かった。ここは、植物たちか生き生きと伸びるために、それを遮る道はない。
代わりに小川を通って移動するのだ。
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