第6章 5話 背中で支え合う

『夏澄は優月に霊力をもどしているの。でも、優月には黙っていて』


 スーフィアの声だ。


『もし、優月の気持ちが変わったとき、いつでも優月が回復できるようにって……』


 風花はそっと優月に近づいた。


 優月の霊力は風景を霞ませている。触れたら壊れてしまいそうな風景だった。


 かける言葉を一生懸命探す。だが、なにも思い浮かばない。


 うつむいて、風花は夏澄のとなりにもどった。


「風花……」


 風に乗るように、夏澄の声が聞こえた。

 彼はすがるような瞳で風花を見ていた。


「風花、いい?」


 ふいに、夏澄が風花を振りかえった。


「なに?」

「あのときと同じこと」


 夏澄は立ちあがって、風花の後ろにまわった。背中から、風花の背中にもたれてきた。


 あの竹林の夜とおなじだった。


 風花は夏澄の背中を支えながら、ゆっくりとすわる。


 夏澄もすわり、深くもたれてきた。

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