第4章 51話 ひよこ

「じゃあ、またわたしも春ヶ原に行っていいかな。ひよこにも会いたい」


『生まれたての仔でね、かわいかったよ。ひよこを連れてきた草花は、やっぱり叱られて正座だったけど』


「優月さんはみんなを護らないといけないんだもんね」

『うん。お兄さん役だからね』


  風花は自転車を停めた。

  夏澄の声が少し曇った気がしたからだ。


『夏澄、気分でもわるい?』


 スーフィアの緊張気味な声がする。


『春ヶ原は、この世の夢なんだ。それなのにさ……』


 夏澄の言葉は途切れる。声は消え入るようだった。

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