第5章 63話 風花の歴史

 四季は子供のころに、よく家でかけられていた曲だ。前はなんとも思っていなかったが、最近になって、曲の良さが分かってきた。


「風花の歴史の中で、七度目くらいかしらね」


 ゆり音は風花を見て、ため息をつく。


「え、歴史?」


「そう。かわいい風花ちゃんの、生まれてから今までの歴史の中で、あんまりないことなの。そんな疲れた顔して帰ってくるの」


「あのね、ママ」


 風花はつい、今日の優月のことを話しそうになる。あわてて言葉を止めた。


 そんな風花を見ていたゆり音は、また風花の頭を撫でた。


「話さなくていいわよ」


「え?」


「私は風花に幸せでいて欲しいから、ここに呼んだの」


 幸せでいてねと、ゆり音は繰り返した。

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