第4章 40話 ゆり音の音楽

 風花はそっと、自宅の玄関のドアを開けた。


 左にある防音室に、灯りがついている。 覗いてみると、母親のゆり音がヴァイオリンを弾いていた。


 ソファには、ポメラニアンのなぎさがいる。


 ゆり音はなぎさに、音楽を聴かせていたようだ。


 なぎさは、かなりリラックスしている。おやつを枕に眠っていた。


  なぎさはヴァイオリンの音が好きだ。 もう一匹の愛犬のみぞれは、フルートが好きだ。


 ゆり音は動物と音楽の関係を、研究している。個々の動物の、好みの音を見つけるのが得意なのだ。


「あら、風花。飛雨くんは? やっぱり帰っちゃたの?」


  ゆり音は目だけ、風花に向ける。


「う、うん……」


 風花は緊張して歩を進めた。 その表情に、ゆり音は手を止める。

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